温暖化と動植物

第4号コラム:2007年 12月 25日
吉岡明良 (東京大学大学院、エコカフェニューズレター編集委員)

『街を行き子供の傍を通るとき蜜柑の香せり冬がまた来る』木下利玄にも詠まれている通り、蜜柑は最も代表的な冬の風物詩の一つだろう。しかし「冬」と言っても決して厳しい寒さを連想させるものではなく、ぬくぬくと炬燵で食べるという暖かなイメージが蜜柑にはある。雪国生まれの筆者にとっては静岡、和歌山、愛媛等の温暖な産地から暖かさを運んできてくれているという気さえしてしまうのである。しかしこのような「暖かな冬の使者」とも言うべき蜜柑もいわゆる地球温暖化には参ってしまうというから驚きだ。

オレンジ色の温州蜜柑の果実

ウンシュウミカンの栽培適温は 15℃ - 18℃と言われているが、鹿児島の栽培地では最近年平均気温が 18℃を超え始め、それに伴う隔年結果や浮皮のような喜ばしくない影響が現れ始めているようだ。一方栽培適地の北限も移動し、2030年代には新潟でも栽培が行えるようになるという予測もある程だ。実際の所どうなるかはわからないが、温暖化は我々の蜜柑のイメージをそう遠くない未来に変えてしまいかねない。

温暖化、蜜柑の双方に縁が深い生き物にナガサキアゲハという蝶がいる。黒い大型の蝶で、幼虫は蜜柑及びその仲間の木の葉を餌として育つ。温暖化との因果関係はよくわからないが、もともと南方系のこの蝶の目撃例が最近になって関東で増え始めた。筆者がよく行く千葉県の公園でも2年前くらいからすっかり我が物顔に飛び回っている。この蝶はその餌に先立って南国の美しい黒蝶から温暖化の象徴にイメージが変わってしまったよい例だろう。これからも我々は蜜柑の香りに冬の到来を感じ続けることができるのだろうか。

最終更新日:2012年 08月 16日
掲載/更新日:2007年12月25日 / 編集

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