時空を超えた旅 / 海と森の供宴に乾杯

寄稿エッセイ:2007年 12月 25日
山崎俊巳 (エコロジー・カフェ運営評価委員)

気仙沼訪問の前夜、東北地方の上空には厳しい寒気が入り込み内陸部を中心に大雪に見舞われているとの情報。関東育ちの一行は、翌 11月 23日の移動理事会は延期ないし中止かと。東北事務所長横山英子さん、事務局次長阿部清美さんからは何の音さたもない。ともに宮城出身で風土を熟知、さすがである。

移動理事会とは、エコロジー・カフェが初めて東京以外で開催する理事会。里山里海など身近な自然に分布する希少な動植物の保護や生態系の保全を通じ、土地の方々と共に、人と自然のかかわり方を実践的に探求し、地域の未来を紡ぐことを目指している。

東京から東北新幹線、大船渡線に乗り継ぎ3時間半の旅。気仙沼にあるもう一つの日常に足を踏み入れた。全国有数の漁港都市と聞くが、実際は漁業を中心に多様な職業が町の機能を支える。近代化の時を経て人々は世代を重ね、町も年をとる。漁師町としての伝統、誇りに新たな輝きを求めたい。

気仙沼漁港の朝もや
福よしで懇親会
リアス・アーク美術館を見学

港にはサンマ漁の漁船がたたずみ、魚市場は大型観光バスが運んだ年配の集団で一時のにぎわいを見せる。「まだございん」と快活な声。行政は新たな総合計画を作成中という。これまで「気仙沼スローフード都市」宣言などの取り組みがなされている。町には海で生きてきた先人らの知恵の継承がある。沖合を暖流と寒流が衝突、リアス式海岸と海岸線に迫る山々、夏にはやませが吹くといった風土がこの地に独自の伝統や食文化、風習、誇りをはぐくんだ。

唐桑の舞根湾に畠山重篤さんを訪ねた。潮のにおいがない。こっそり人さし指を海水に浸し口内へ。甘い。背後に迫る山。海水は山からのミネラル豊富な水で薄められた汽水。ここで育ったカキは上品で実にうまかった。室根山は漁師らの信仰の山。大川は気仙沼湾に注ぐ最大の川、室根と海をつなぐ。漁師の歴史に理があった。特に、森が海に運ぶフルボ酸鉄は海草を育て、地球温暖化防止にも効果的という。壮大な話に未来が開かれる。

南三陸町自然環境活用センター所長の横浜康継さんは海草を用いて小学生から高校生までの環境学習プログラムを確立。35億年に及ぶ進化の歴史を単純化した教材に驚いた。海中で生まれた生命は海草が大量に作った酸素に守られ、水と決別し、重力に打ち勝ち、陸上に進出を果たした。その延長に私たちは存在している。地球の営みに無駄はなかったという。

最後に、過去に学び、自然に学び、「共生」と「循環」の真理を追求することになった今回の旅をサポートしてくださった方々に感謝したい。再訪の夢を託して。

静寂の舞根湾と和舟
畠山さんと@水山養殖場
極上のカキは恋人

最終更新日:2012年 08月 16日
掲載/更新日:2007年12月25日 / 編集

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